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彼女が行方不明になったという話は、だいぶ後から聞いた。

その時はすでに退職して3年経っていたので、同期と会うことはほとんどなかった。

結婚したという話が寮の時の同期Nに伝わり、久しぶりに会わないかと電話があった。

日曜日の昼間、ファミレスで落ち合った。

二人とも酒が弱い方だし、騒々しいのが嫌いだから、夜という選択肢はなかった。

周りは若い女性ばかりということが話のきっかけだったかもしれない。

ところであのストーカー薬剤師のこと聞いたか、と。

え、全然、何もない。

行方不明になったんだよ。

いつ？

もう1年経つらしい。

タイへ旅行へ行って、それっきりらしい。

何か事件？

いや、それがわからないから行方不明。

誰か連れがいたのか。

一人だったらしい。

海外のことなんで、両親もどうしていいかわからないまま現地へ行って探したらしい。

でも、何もわからなかったようだ。

死体が出ていないなら、生きている可能性もある？

まあ、とにかく行方不明。

私は思い出した。

あれ？こういう感じ、前にもあったような。

それでも、直接関係していないので、まだ気にしていなかった。

やっと意識しだしたのは、例の妻の過去と関係がありそうな外食店が閉店になっているのを見て、隣のゴルフ練習場で、「焼き肉店、閉店になったんだね。」

「ええ、そうなんですよ。オーナーが亡くなった関係らしいです。」

「へえ、流行っていたように見えたけど。」

「それが、投資に失敗したらしいです。」

地元の経済新聞を調べたら、マンション投資をしていたが、バブルがはじけて資金が回らなくなった、と書いてあった。

一応事故死となっていたが、世間では自殺という見方だったようだ。

踏切で立ち往生というのはそうそうない事故だから。

ああ、3人目だ。

その時、やっとすべてが繋がっているように思えた。

私にとって、不快な人物がこの世からいなくなる。

それも間をおいてごく自然に。

罪を感じさせないように。

実際、今でも私に罪の意識はない。

だって、死んでほしいなんて、一度も思っていないのだから。

そして、そんなにそれで苦しんでもいないし。

ただ、ちょっと嫌だなという感じしかしていないモノたち。

人ではないな。

それ以下の認識。

関わりたくない。

そういうこと。

まさか、それがかなっているのか。

偶然に。

偶然だとしても、もう嫌だな。人と関わりたくない。

仕事したくない。

家に居たい。

脚もそろそろ限界っぽいし、いっそ、完全にリタイアして、妻には現役復帰してもらって、主夫になりたい。

宣言から1か月後、大きな病院で復帰。

キャリアが生かされ、いきなり副主任待遇。

夜勤するので、私より高収入確保。

勤務を工夫すれば、子どもたちと2泊くらいの旅行にも行ける。

けっこう優雅な生活が始まった。

計画？思惑通り。