~8
彼女が中学生だった時、上級生に裕福な家の子がいた。
ありきたりな話だ。
取り巻きがいて、ボスのご機嫌を取るやつがいた。
あの子いいな。
そう、つぶやいたのを聞き逃さなかった子分Gは、洋子を呼び止め言った。
上条さんがいいと言ってる。来いよ。
ちょっと。
いいから来いよ。
嫌です。
振り払った手が、Gの顔に当たった。
何するんだよー。
キサマ、ただじゃ、おかねえぞ。
そして、Gは洋子が早朝に牛乳を配達しているのを知り、企てた。
脅しのつもりだった。
あんなに激しく抵抗するからいけないんだ。
Gは自分一人では手に負えないので、仲間に助力を頼んだ。
少し脅すだけのつもりだったんだ。まだ。
しかし、他の男たちは違った。
4人で洋子を囲んだあと、何を為すか互いにけん制し合っていたら、上条がお前ら押さえろと命令したのだ。
それは絶対だ。
三人は黙って見守るしかなかった。
そして、洋子の人生は貧困からさらに暗い穴へと落とされた。
同じ町には住めない。
顔を見るのも嫌だ。
その結果、住み込みで働き、夕方からは学校へ行った。
准看の資格を取ってもなお、社会に出る不安はあった。
さらに高看へと進学した。
診療所と学校の往復。
ここなら安全だと思った。