~30
書留を持ってきた配達員は美人だった。
顔を見られたくないようでヘルメットのままうつむき加減にサインをして欲しいとペンを差し出してきた。
30代だろう。
スラっとした体形ときれいな指。
爪もきれいだ。
どうしてこんな美人がと言うなかれ。
普通に接客する仕事に付けば、毎日同僚やお客から同じことを何回も聞かれたり探られたり。ウンザリだ。
その立場になったことがない方々には理解が難しいだろうけど。
あなたはブスだからこんな仕事をしているのか、と言われたら、毎日喧嘩だろう。
仮説、美男美女でめでたく結婚。
専業主婦となった美女は家の中。
旦那は相変わらずモテモテ。
結婚していても、未練たっぷりな同僚が妻への嫌がらせを兼ねて誘惑。
SNSで思わせ写真拡散。
そして、離婚。
自活するために面接受けるも、中年男性のセクハラばかり。
郵便配達なら、外で一人きりになれる。
ヘルメット被れば顔もかなり隠せる。
美女はそれを売りにして稼ぐ覚悟と勇気がないと辛いものだ。
男社会のセクハラ天国のような田舎ではなおさら。
男でも似たようなものだった。
学生時代から、私は釣り餌。
他大学との合コン。
会社先輩たちの合コン。
取引先との接待。
会社に勤めている限り断れない。
私も会社へ行く仕事を辞めて、警備員を2年したから、とてもよくわかる。
それなのに。
チョット油断して、高校のPTA。
もうおばさん達ばかりなので心配はないと思っていた。
たしかに誘惑と言うほどのことはなく、打ち上げとカラオケなのだが。
飲酒した私を、飲まないでいた方が、交代で送るようになった。
深夜24時~25時。
妻が嫉妬しないわけがなかった。
勤務を調整して、迎えに来るようになった。
しかし、学校トップになり、ついで県の役員幹部になると、県外への出張宿泊となる。
流石に県外までは来られない。
が、帰りの港に予告なく迎えに来た時は、異常な感じがした。
そうか、かなり疑われていると確信した。
そして、なら、そうなってもおかしくない状況なのか、と考えた。
一人候補者がいたから。
初対面から好意は感じている長身の事務が。
普通のおじさんだと低くなる程なので、誰も手を出してい無さそうだった。
私とは、ヒールを履いてちょうどくらい。
流石に私も、大きいなあ、と敬遠していた。
間違いか。
高くつくよなあ。