~12
何度目の応募だったか。
それまでは除外していた外食産業へ行ってみた。
すぐ仕事の説明を実地で経験させられた。
しかし、私は猿真似しかできないので、しなくていいことまでまねてしまった。
そして何より苦痛に感じたのは、食べ残しを片付けること、大声で挨拶すること。
その度に注意を受け、どんどん滅入る。
翌日、すぐに無理だと断りを入れに行った。
妻の異変は、そのチェーン店のチラシで代表者の顔と名前を見た時だ。
今まで見たことないほど興奮して、ダメだ、行かないで、嫌いだ、という。
中学時代の知り合いだという。
結局、試しに行くだけだからと行って、そして、すぐに無理だと断った。
その時に、妻の過去を見たと思った。
そして、触れてはいけないということも。
結婚式の招待者リストには、いわゆる級友はいなかった。
恩師さえも。
診療所の先生夫婦と同僚だけが妻側参列者だった。
しかし、その時私は全く何も興味を感じていなくて、親がすべてを段取りしていた。
まるで父が結婚するみたいに上機嫌で。
そして、それは曰く付きで結婚した長男のとは雲泥の差となり、兄嫁の機嫌をとことん最悪なものにして、後々まで影響した。
もちろん、兄嫁は欠席した。