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何度目の応募だったか。

 

それまでは除外していた外食産業へ行ってみた。

すぐ仕事の説明を実地で経験させられた。

 

しかし、私は猿真似しかできないので、しなくていいことまでまねてしまった。

そして何より苦痛に感じたのは、食べ残しを片付けること、大声で挨拶すること。

その度に注意を受け、どんどん滅入る。

翌日、すぐに無理だと断りを入れに行った。

 

妻の異変は、そのチェーン店のチラシで代表者の顔と名前を見た時だ。

今まで見たことないほど興奮して、ダメだ、行かないで、嫌いだ、という。

中学時代の知り合いだという。

 

結局、試しに行くだけだからと行って、そして、すぐに無理だと断った。

 

その時に、妻の過去を見たと思った。

そして、触れてはいけないということも。

 

結婚式の招待者リストには、いわゆる級友はいなかった。

恩師さえも。

診療所の先生夫婦と同僚だけが妻側参列者だった。

 

しかし、その時私は全く何も興味を感じていなくて、親がすべてを段取りしていた。

まるで父が結婚するみたいに上機嫌で。

 

そして、それは曰く付きで結婚した長男のとは雲泥の差となり、兄嫁の機嫌をとことん最悪なものにして、後々まで影響した。

もちろん、兄嫁は欠席した。