昭和26年の別世界、麦秋。
戦後たった5~6年で、もう何もなかったかのようなビルや喫茶・料亭。
文人や政治家が多く住んだらしい鎌倉。
田舎の山奥で育った私には昭和30年代に入ってもなお貧しい暮らししか知らないので、物凄い違和感が最後まで付きまとった。
おまけにこの辺の映画に出てくる家庭は、医者とか重役とか学者とかばかり。
女中がいる、というセリフが普通に出るに及んでは、もう上流階級の映画としか思えない。
そんな中、勤務医ではあるが、主人公の家とは格段に貧しい感じの家の杉村春子が見せる終盤の演技には、さすがと思わせる。
専務と秘書という関係。
その上司から勧めらる縁談。
三流小説の感覚から言えば、ていのいい別れ話。
高く評価される映画作品が多いけれど、田舎の山奥で育った私には、東京だけ、上流だけが特別な暮らしという感じしかしない。
本当に昭和26年には、東京駅も立派にあるし、その向こうにこれまた立派なビル群が見える。
え、あの戦争は何だったんだ。
戦地へ散った人たち、シベリアから帰れない人たち、満州へ置き去りにされた子どもたちは・・・・と怒鳴りたくなるほどの、別世界の暮らしぶり。
もしかしたら、まだまだ貧しい庶民の様子がわかる映画は作れなかったのでしょうか。
GHQはいい仕事してます。
日本はこんなにも豊かです。
東京は近代化しています。
子どもだって、鉄道模型で遊んでいます。(ものすごく高価なはず)
目に見えるものは、真実の外側。
見せたくないものは映らない、写せない。
そんな国がまだ近くにありますよね。