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指輪が入らない。

 

親の段取りにのっかり淡々と進む結婚への道。

 

式が進み、指輪の交換。

 

妻の指にはすんなり入った。

そりゃ、そうだ。

指輪だけは、田舎で用意すのが難しいのと、サイズが正確にわからないから。

唯一私が決めたこと。

その場に妻はいなかった。

だから、妻の指に入らないというのならわかるが。

 

私の指に入らないのだ。

おいおい、たしかに私は手が大きいが、店で測ったんだよ。

 

その時一瞬思った。

拒絶している。

 

なんか焦っている妻。

みんながざわざわしてきてますます焦っている。

 

仕方ないので、自分で押した。

すんなり入った。

 

安堵する会場。

 

ガックリする自分。

 

こういうのって、偶然じゃないんだよね。

 

この後も、ぎくしゃくした感じは続出するのでした。

 

一番の違和感は、私の親族が感じていただろうけど。

その違和感をみんな勘違いしていた。

 

式場に並んだ親族は、義母と義弟だけだったから。

 

仲人の奥さんから聞かされてたストーリーは、母子家庭の苦労人を泥沼から救ったという美談。

 

その泥沼に咲いた白い花を見に、こちらの親族は日本各地から集まったのだ、山奥の田舎へ。

関東・関西・四国・中国地方から八組も。

 

会場は町内最新のホール。

 

ところが、暖房がいつまで経っても暖かくならない。

故障していた。

 

外は雪なのに。

 

それでも大勢の熱寒さを感じない。

皆、美談と白い花に酔っているのだ。

 

実際、酒盛りはあちこちで度を越し、ビデオのカメラマンも酔って、録画が早々にダメになっていた。

 

糖尿病の院長は、奥さんが管理していても、酒を注がれまくるので、寿命を縮めたみたいで、その後10年もたなかった。

 

結婚20年後くらいに見た「白夜行」が、他人ごとのようには思えなかった。

 

泥に咲く花という言葉が、すべて。

 

罪を背負ったのは私。

 

私が嫌だなあ、と思うと、・・・・・人が死んだ。