~27
指輪が入らない。
親の段取りにのっかり淡々と進む結婚への道。
式が進み、指輪の交換。
妻の指にはすんなり入った。
そりゃ、そうだ。
指輪だけは、田舎で用意すのが難しいのと、サイズが正確にわからないから。
唯一私が決めたこと。
その場に妻はいなかった。
だから、妻の指に入らないというのならわかるが。
私の指に入らないのだ。
おいおい、たしかに私は手が大きいが、店で測ったんだよ。
その時一瞬思った。
拒絶している。
なんか焦っている妻。
みんながざわざわしてきてますます焦っている。
仕方ないので、自分で押した。
すんなり入った。
安堵する会場。
ガックリする自分。
こういうのって、偶然じゃないんだよね。
この後も、ぎくしゃくした感じは続出するのでした。
一番の違和感は、私の親族が感じていただろうけど。
その違和感をみんな勘違いしていた。
式場に並んだ親族は、義母と義弟だけだったから。
仲人の奥さんから聞かされてたストーリーは、母子家庭の苦労人を泥沼から救ったという美談。
その泥沼に咲いた白い花を見に、こちらの親族は日本各地から集まったのだ、山奥の田舎へ。
関東・関西・四国・中国地方から八組も。
会場は町内最新のホール。
ところが、暖房がいつまで経っても暖かくならない。
故障していた。
外は雪なのに。
それでも大勢の熱寒さを感じない。
皆、美談と白い花に酔っているのだ。
実際、酒盛りはあちこちで度を越し、ビデオのカメラマンも酔って、録画が早々にダメになっていた。
糖尿病の院長は、奥さんが管理していても、酒を注がれまくるので、寿命を縮めたみたいで、その後10年もたなかった。
結婚20年後くらいに見た「白夜行」が、他人ごとのようには思えなかった。
泥に咲く花という言葉が、すべて。
罪を背負ったのは私。
私が嫌だなあ、と思うと、・・・・・人が死んだ。