~18 

その人はバツイチになったので働かなくてはいけない、という噂を聞いた。

 

理科は、なかなか人材が定着しない。

コマ数の関係で給料が安いから。

 

算数は塾長。

中学の数学は別の専門家。優秀な方はやはり定着しない。引き抜かれるから。

 

私は当初、中学の国語・社会だった。

面接時は社会で行ったのに、国語出来るよね、と強引に押し切られた。

NOと言えないし、免許はなかったが昔から得意で自信はあった。

 

そうなんだ、本当は文学部へ行けばよかったのに、勇気がなかった。

いや、英語力がなくて入試についていけないレベルだったのだ。

 

まあ、1年目はそこそこうまくいった。

2年目に彼女が来たのだ。

年上だが、私のストライクゾーン。知的で背が高く美人。

 

どうしてバツになったのかより、デートしたいとすぐに思った。

最初の子どもが生まれて間がないのに。

家庭??は母子で成り立っている感じだったから。

 

赤子を抱いて塾に来た時も義母がいた。

妻が車を運転して、義母が抱いていた。

塾からのお祝いのお礼に来たのだ。

 

そもそも産院が塾長の奥さんも利用したところで、奥さんは出産祝いに行ったのだ。

したがって、一見和やかな風景も、私には女性独特の火花が散っているよう感じた。

 

塾長の奥さんは、新しいバツイチ美人と塾長を疑っていたが、どうも私と親しそうという見立てで、それとなく妻に彼女の存在を知らせたようなのだ。

 

新し女の人が入ったんですって??

ああ、バツイチのおばさんだよ。

キレイな方なんでしょう。

ううんん、どうかな。

 

実にヒヤヒヤするやり取りである。

 

そういう背景のもと、産院が近いということもあって、昼間に寄ったのだ。

すると、バツイチはカメラを持ってきて、私を含めた写真を撮った。

おいおい、どうしてカメラを持っているのだ??

 

美男という形容で語られる時、それは同時に嫉妬が燃える時。

小心者の私は、直接話も出来ない。塾内では。

 

ただ、掃除のときは、小学校舎とは道を挟んでいるので、比較的気楽になった。

もっぱら向こうから聞いて来るのだが、先生の授業は楽しそうですね、と言われて心が揺れないはずはない。

 

明らかに好意が塾内でも見えてきたころから、塾長のイジメが始まりだした。

夏期講習は朝から夕方まで全部埋まった。週6日。

なんとか乗り切った9月には過労で入院した。

そして10月に辞めた。

 

妻は喜んだ。