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中学までは義務教育だ。

 

どんなに貧しくても、中学卒業まではたどり着ける。

もちろん、給食費を滞納するという話は聞くけど、彼女は自分で稼ぎ出していた。

牛乳配達を3年間続けて。

 

そして、卒業数か月前に、担任と共に医師の面接を受けていた。

教師は、この子は優秀で努力家だが、家の事情で働かなくてはいけない。

定時制に通いながら准看の資格を取らせて下さい。お願いします。と頭を下げた。

 

それを知ったのは、結婚式のスピーチだった。

 

私も、両親も、仲人も、誰も聞かなかった。

 

義母の家を見たものは、誰でも察することができたから。

事情を聞いてはいけない。

 

母子がどんなに苦労してきたかは、聞かなくても分かったから。

 

そして、自分たちが救いの主になることに酔っていたのかもしれない。

 

結納の日。

仲人夫妻を田舎まで父の車で送って行く時、奥さんは呟いた。

 

Yちゃん、いいことをしたね。

 

貧困という泥沼の中から、白い花を救い出した。

 

そういう、つぶやきだと、男たちは思った。