通夜へは行かなかった。
本当に結婚したいのか、と問われて答えられなかった。
結納の日。
予告もなく田舎から出て来た父親とよく知らない親戚の仲人を前にして。
義母になる人は核心をついてきた。
彼女はわかっていたのだ。
人を愛することがわからない人間だと。
そして、彼女の娘にも秘密があったことを。
とうとう、何も言わず、互いに気付かぬ振りをして終えた。
事実は知らない方がいい場合が多いものだ。
まして真実など。
・・・・本当にいいのか。
問われても、答えられない。
自分がわからないのだから。
生まれなければ・・・・そう、思っていたのだから。
今も。