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髪の長い彼女は注目の的だった。
だから側へ寄るだけでも勇気がいる行為だし、目立つ。
そういうのを遠くから眺めていたら、部室の入り口で出逢った。
卓球部のマネージャーになりたいと友達二人で来たということだった。
ええ??こんな地味なところへ??
私は応援団の勧誘をかわすために早々に入部を彼らに告げていた。
実際は、今日、ようやく訪問した次第で。
そのタイミングで、マネージャー希望とぶつかったわけ。
4年生は、マネージャーなんてすることないし、カモフラージュだろうという。
こちらが希望していなくても、接点が生まれるのが私なんだ。
さらにオリエンテーション済み、講義が始まりだしたら、あちこちで一緒になる。
それは新入生全体が受けるシステムだから当然だ。
しかし、4限目の教育心理の教室で遭遇すると穏やかではいられない。
40人くらいしかいないから。
好きでもない経済を選択してきたので、心理や日本史や教育という文系科目を勉強したかったから教員免許がもらえるコースを追加した。
月曜から土曜まで空きはなし。
当時はまだ、土曜半ドンだった。
そして、事件は早々に訪れる。
幽霊部員の私に実力部員の同級生が、かぐや姫のコンサートチケットを二枚くれたのだ。行けなくなったからと。
日時は今日だ。3時間後。
おいおい、振られたのか??
そうは言っても、誰を誘う。
迷っていたら、長い髪をかき分けながら彼女が来た。
おい、かぐや姫、見に行くか。
え、いつ?
今から。
・・・横の友達に、
ごめん、病欠にしておいて。
おいおい、行くのかよ。
想定外。
待てよ、着替えて来なくては。
じゃ、18時半に噴水のところで。
ええ、一緒じゃないの、という声はその時聞こえなかった。
なんか前にも似たようなことがあったなあ。
あれは中学時代、一つ上の憧れの先輩。
なかなか声をかける勇気はなかった。
ところが、町内の野球ツアーのバスに先輩と友達がいた。
高校野球とナイターのダブル企画。
女子たちの目的は別だったみたい。
オジサンたちと高校野球を見に行こうとすると、彼女たちは繁華街へ。
そして、ナイター終了し、帰路のバスを待っていると、先輩が・・・
**くん、これ、どうぞ。
え?ありがとう。
どういうこと?
このツアーは偶然でしょ。
夏休みの部活動の行き帰りは、先輩と会う貴重な時間となった。
先輩の家は学校から近いのだ。
私の家は4km。ドキドキしながらペダルを踏んだ。
そうなんです。
自分から告白したのは、正確にはないわけです。
なんとなく向こうから、うまくいっている感じ。
これが、後々こじらせ男子となるなんて・・・・